私は香夜。珍しい品物と退屈のない日々を求めて旅をする行商人だ。 趣味は読書と訪れた街での日々を綴ること。 あなたにとっての平和とは何だろう。 戦争がなく穏やかな世界だろうか?争いや心配事のない生活だろうか? 大切なもの、失いたくない数少ないものに手を伸ばせば触れることができる状態。 私はこれを平和と呼ぼう。 ・・・そう、私にいわせてみれば今日もペジュオンは平和そのものなのだ。 +爆弾事件+ 朝、冒険者の控室へ行ってみるとそこは全てが炭化した世界だった。 テーブルとイスの残骸が足元に転がり、4時間紳士のカウンターにはガラスの破片が散乱している。 その中には私が大事に飲んでいたキープボトルも含まれているのだろう。 なかなか酷い状態になってはいたが人間の姿は見えなかったのでひとまず安心だ。 そのうちここのマスターか王宮の人が来て掃除をするだろう。 ボランティア精神の欠片も持たない私はそのまま踵をかえし、さわやかな朝の空気の中へと戻った。 お昼頃にもう一度様子を見に行くと、開かれた扉の向こうに控室長の後姿があった。 涙声で何かブツブツと呟いているようだったので、近づくのはやめておいた。 近づくとアブナイ雰囲気だった。 +不治の病+ 私は楽しいものや貴重なものに触れると手離せなくなる、という持病を持っている。 小さい頃、天然記念物に指定されていた動物をこっそり飼ってみたり、 出世払いで返すと押し切って祖父から骨董品の短剣を譲ってもらうなど、例を上げればキリがない。 (最終的に「亀の子煎餅」という貴重な菓子5つで短剣は私のものになった。  どうやら出世払いには期待が持てなかったらしい) はぁ・・・それにしてもペジュオンには楽しい人が多くて困る。 この街を去るときに自制するのは大変そうだ。 縄や投網などにはなるべく触れないようにしよう・・・。 ついでに書いておこう。 案山子は農業を営んでいる方から頂いたもので、盗品ではない。 +旋律の夜+ 戦慄のフルートをたくさん仕入れたので、自分用に一つ確保しておいた。 街中でなければ夜中に練習しても人に迷惑はかからないだろう。 そんなわけで、トラブルとの散歩がてらカプス湖に向かった。 バス釣りのイベントが終わった直後だったせいか夜の湖に人影はなかった。 私はトラブルが遊びに行くのを見送ってから、昔よく聞いたお気に入りの曲を演奏しはじめた。 最後にこの曲を聞いたのはいつだっただろうか。 そんなことを考えていると、湖に面した林の中から凄い勢いで人が飛び出してきた。 「道に迷って野宿をしていたら、世にも奇妙な物語のテーマが聞こえてきてっ・・・」 ・・・あんまり必死な顔で訴えてくるので、思わず笑ってしまった。 戦慄のフルートは傍迷惑だ、とトラブルに没収されてしまった。 妙な所で常識的な梟だ。・・・・・あーあ。 +純白の衣装+ インガムさんの転職祝いにあるものを用意した。 ・・・カースト・レグナードさんと、連名、で。 店の前に置かれた大きな箱を見ているとつい口元がニヤけてしまう。 なかなか合うサイズがなかったので自作になってしまったが、きっと相当に嫌がってくれるだろう。 こっそりインガムさんの体のサイズを測るのには苦労した。 あの手この手を使ってようやく必要な部分を測り終えたのだ。感慨も一入というもの。 インガムさんがこれを着る事はないと思うが、完璧なものを提供するのは嫌がらせの極意。 ああ、それにしても冬は寒くて夜が長く大変だった・・・。針を刺した手が痛い。 そういえば最近、レグナードさんを見ないような気がする。 元気だろうか? +色違いでも・・・+ 料理をしていたら、包丁が野菜に刺さったまま抜けなくなってしまった。 やはりこの食材は固すぎただろうか? それとも力の入れ方が悪かったのか・・・。 とにかく、刺さったままの包丁をどうにかしなければいけないだろう。 押してみたり、引っぱってみたり、振り回してみたりといろいろ試してみたが全くはずれる気配はない。 どうやら私の力では無理のようだ。 しかし、控室に持ち込んで誰かに抜いてもらおうにもこの野菜は問題がありすぎる。 重いし、大きいし、その上・・・ああ、ダメだ。やはりあの人の目には触れさせない方がいいだろう。 でも私の部屋に放置しておくのも嫌だ。 ・・・・・どうしよう、このかぼちゃ。 インガムさんにこっそり相談していたら、後ろに笑顔のカボチャさんが立っていた。 以下略。